十一月~お火焚きさん |
作者 たきねきょうこ | |
ページ 1 of 2 実りの季節の到来。 ほくほくの焼き芋にゆで栗、そして、炊き立ての新米。 十一月になると、あちらこちらで揺らぎ始める、「お火焚きさん」も、日ごろお世話になっている火への感謝と畏敬のおまつりです。 今でも、火を扱われる古い商家・・・染物屋さんや造り酒屋、食べ物屋さん、お風呂屋さんや鋳掛け屋(いかけや)さんなどでは、霜月のそれぞれ決まった日になると、お釜やはしりもと(台所)を清め、かまどの上にお不動さん(不動尊)の祭壇をこしらえて、お供え物をあげ、お火焚きをなさいます。 家族や店の働き手それぞれの願いごとを記した護摩木(ごまぎ)が、祭壇の前に井桁に組み上げられ、「日にち、おかげをこうむりまして、おおきにありがとうさんです」と、火を点けた家長が、手をたたきお礼を唱えると、護摩木は火の粉を散らしながら、勢いよく燃え上がっていきます。 でもそれほど物資の豊かでなかった当時、幼い母をはじめとする子供たちの本当のお楽しみは、お火焚きのお供え物のおさがりだった様子。 さてそのお供えはというと、まず、「お火焚きまんじゅう」。 それから次は、「おこし」。 そして最後は、三宝に山のように積み上げられた「おみかん」。 |
< 前へ | 次へ > |
---|