一月~大徳寺・高桐院と藪柑子(やぶこうじ) |
作者 たきねきょうこ | |||||||||||
ひときわ底冷えの厳しかった松の内に、雪催いの小正月も明けて、睦月・壱月。舞い踊る風花の白らかさに、南天の朱赤の実が映えて、あらたかな年の始まり。 北区・大徳寺の「金毛閣(きんもうかく)」と呼ばれる朱塗りの山門の脇をぬけ、禅寺特有のおごそかさが漂う方丈から松の緑に彩られた山内を西に折れると、やがて左手に高桐院の表門が見えてきます。 ここ高桐院は、江戸時代初期の武将で、茶人としても名高い細川忠興(三斎)が、父・幽斎の弟、玉甫(ぎょくほ)禅師を開祖として慶長六年(1601年)に建立された細川家の菩提寺で、秋の紅葉の名所としても知られています。両側からの楓が包み込むように真っすぐ唐門まで続く参道には、棕櫚縄で結わえたすがしい青竹の垣が配され、敷石ごとに忠興公の高い美意識が香り立ってくるようです。 その高桐院の客殿と書院の間の小じんまりとした中庭で、うつむき加減の小さな赤い実を揺らせているのが、藪柑子。冬の庭を彩るこのヤブコウジ、常緑の小低木で山橘(ヤマタチバナ)とも呼ばれ、古くから私たちの国の固有種としてその可憐な姿が愛しまれてきました。 この雪の消遺(けのこ)る時にいざ行かな 万葉集の中で大伴家持は、雪に映える真っ赤な実の趣を讃えた歌を遺しています。
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