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小飛出(ことびで)

能「小鍛冶(こかじ)」

 勅命により御刀を打つことになった刀工、三條小鍛冶宗近(さんじょうこかじむねちか)は、すぐれた相槌がいないことに困り果て、氏神である稲荷明神に詣でます。そこにあらわれたひとりの童子が、稲荷の加護と名刀の誕生を予言して夕雲に消えていきます。やがて鍛冶壇を据えた宗近のもとへあらわれいでた神体姿の稲荷明神は、相槌としてともに名刀「小狐丸(こぎつねまる)」を見事に打ち上げた後、叢雲に飛び乗っては東山、稲荷の峯へと帰っていく・・・。
 白頭に銀狐の冠をいただいた稲荷明神の面に用いられるのは、緋色や金泥の小飛出(ことびで)。大きく見開かれた眼からは、霊験のあらたかさと威霊のおおらかさが、今にもこぼれ落ちてくるようです。

小飛出(赤鶴一透斎作 室町時代)

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