能「善界(ぜかい)」
中国の仏教界を席巻した天狗「善界坊」は、日本をも手に入れようと、仏法の牙城、比叡山へ山伏姿で乗り込みます。雷鳴を轟かせながら僧正の車を襲い、魔界へ誘い込もうとしますが、僧の祈りの声にたちあらわれた不動明王や明神の神仏混合の連合軍に逆に翼をもぎ取られ、ほうほうの体で故国へ逃げ帰っていきます。 後シテの面は、「髭べし見」を使い、荒唐無稽で、ユーモアを秘めたおおらかさに溢れ、能の主題の多様さを物語っているようです。
髭べし見(作者不詳 江戸後期)